配偶者短期居住権について①   港北区の司法書士のブログ

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配偶者「短期」居住権について①成立要件と期間   港北区の司法書士のブログ

2020/06/04

 今回から配偶者「短期」居住権についてのお話になります。配偶者居住権と同様に2020年4月1日からの施行となります。

 配偶者「短期」居住権は、残された配偶者の従前の居住権を保障するための制度である点で配偶者居住権と同じですが、配偶者居住権との違いは、短期間(少なくとも相続発生から6か月)ではあるものの、一定の要件を満たした配偶者について遺産分割や遺言書なくして取得できる点にあります。

 民法1037条1項には、「配偶者は、被相続人の財産に属した建物相続開始の時無償居住していた場合には、・・」と、その成立要件が定められています。ここでいう「配偶者」には、法律上の婚姻関係が必要で内縁の配偶者は含まれないとされています(この点は配偶者居住権と同じです。)。

 また、存続期間としては、配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合、以下①、②のいずれか遅い日までとなりますので、少なくとも相続開始から6か月間は、従前どおり居住建物に住むことができます(民法第1037条1項1号)。

① 居住建物について、相続人間の遺産分割協議により誰が相続するか確定した日

② 相続開始の時から6か月を経過する日

 なお、遺産分割をすべき場合以外の場合(配偶者が相続放棄した場合や、遺言で居住建物が配偶者以外の者に遺贈された場合)、居住建物を取得した者は、配偶者「短期」居住権を取得した配偶者に対し、いつでも同居住権の消滅の申入れができるとされ、この申入れがあった場合は、この申入れから6か月を経過する日に配偶者居住権が消滅します(民法第1037条1項2号及び3項)。

 

 以上、要件と期間をご説明しました。前回ご紹介しました配偶者居住権の場合、原則「終身」その権利が存続しますが、同権利は相続人間で遺産分割をして取得する、あるいは被相続人が作成した遺言書によって取得する必要があることは既にご説明したとおりです。しかしながら、これらによって配偶者居住権を取得できない場合、配偶者は居住建物を取得した者から、居住建物を明け渡すよう求められ、精神的、肉体的に大きな負担となり、酷な結果になってしまいます。したがって、このような場合でも、短期間であるものの、前述の一定の要件を満たした配偶者に従前どおりの居住権を与えるための制度が、配偶者「短期」居住権となります。

 

 なお、この配偶者「短期」居住権は、配偶者が配偶者居住権を取得した場合には成立しません。配偶者居住権を取得している以上、これに加えて配偶者「短期」居住権による保護を与える必要がないためと考えられます。また、配偶者が相続欠格者に該当したり、廃除によって相続権を失った場合も、配偶者「短期」居住権は成立しないことになります(民法第1037条1項但書)。※相続欠格と廃除については、また別の機会にお話しいたします。

 

 今回はここまでとさせて頂き、配偶者「短期」居住権の続きは、次回にお話しいたします。